「ビッテ式(ヴィッテ式)教育」について聞いたことがありますか?
一般的な知名度は高くないと思いますが、知育に関心の高いこのブログの読者の方なら、どこかで聞いたことがあったり、既にご存じかもしれませんね。
ビッテ式とは?
ビッテ式とは、天才法学者カール・ヴィッテ(1800年ドイツ生まれ)を育てた「超英才教育理論」です。
このヴィッテという方、子どもの頃から数か国語を話したとか、法学者でありながら詩人ダンテの研究でも名を馳せたとか、人格も良くさらに健康であったとか、とにかく「多方面ですごい人」らしいです。
どうしてそうなれたのかというと、父親が、猛烈な教育パパだったみたいです。
この教育パパが「息子が14歳になるまでにどんな教育を施したか」を本に書いて残しており、その内容=ビッテ式の教育理論となっています。
日本で初めてビッテ式を紹介した本
ビッテ式の英才教育理論は、日本では、大正時代に発行された木村久一氏著の『早教育と天才』で初めて紹介されました。
英才教育の教材セット「家庭保育園」などはこの本を基にしているらしいです。
高額なため家庭保育園を買えなかった私は、「この本を読めば教材セットを買わなくても英才教育のやり方が分かるかも!?」と期待を込めて読みました。
すると、思っていた以上に面白い話がいろいろとあったので、ご紹介したいと思います。
<家庭保育園について補足>
この記事を書くにあたって家庭保育園の公式サイト(http://www.katei-hoikuen.co.jp/)を見てみたところ、現在工事中となっていました。
けっこう前から工事中になっているようです。こういった場合、Wayback Machineというバックアップサイトで見られるかもしれません。
Wayback Machineの「http://~」のところにURLを入力して、「BROWSE HISTORY」をクリックします。
すると、カレンダーが出てくるので、過去の日付をクリックするとその日付時点でのサイトの情報が閲覧できます。
ビッテ式英才教育の具体例
本で紹介されていたビッテ父の具体的な教育方法をご紹介します。現代の子育てでも使える例が満載だと思います。
早くから言葉を教え始めた。教え方は例えば、赤ちゃんの前に指を出して動かす。赤ちゃんが掴むのに成功し、口に入れて吸い始めたら、親が「ゆび、ゆび」と明瞭に数回発音して聞かせるなど。
赤ちゃん言葉、方言などは決して教えなかった(妻や使用人にも禁止した)。頭を明瞭にするにはまず言葉を明瞭にしないといけないので、曖昧な言い回しはしないようにした。
子どもにこの世について教え、語彙力も高めるため、毎日お話をして聞かせた。また、お話の効果を高めるために本人に繰り返させた。
絵本を買って来て、それについて面白く話して聞かせ、
「字を読むことができれば、こんなことはみんな分かるんだけどな」
「この絵の話はとても面白いけど、話をする暇がない」などと言って字を覚えさせた。
字や数字は印刷したものを10センチ四方の板に貼り付けて、遊びの形で教えた。
外国語は子どもに文法を教えても分からないので、とにかく慣れさせた。同じ話をいろんな言語で読ませた。
3~4歳になると毎日一緒に1~2時間散歩をした。その間は野花、昆虫などについてずっと話をした。
学問的に系統立てて教えることはせず、本人の興味を引いたものについて適宜教えた。
村の高い塔に登り、紙に鉛筆で周囲の略図をかかせた。そこに散歩で見かけた道路や森や川を追記した。それを本屋で買った地図と見比べて訂正させた。
学問を詰め込むよりも見聞を広めることを大切にした。見かけた物は何でも説明し、2歳頃から買い物や音楽会、博物館、美術館、工場や病院などに連れて行った。
訪問から帰ると、見聞きしたことを母親などに詳しく話させた。旅先から手紙も書かせた。
知識欲や探求心を満足させるために金や労力を惜しまなかった。手品師にお金を出して種明かしを見せてもらったこともしばしばあった。
自然に親しませることは最大の教育と考えていた。なので自然に親しめる遊び場(60センチの深さに砂利を敷いて、周囲に草木などを植えた場所)を与えた。
地理や歴史に関する知識を正確にするために、いろんな芝居遊びをした。お話や歴史上の事件を演じたり、かつて行った旅行を再現する旅行遊びなど。
よくやる失敗を避けさせるため、親子の立場を交換する遊びもやった。母親が子ども役になり、わざと失敗してみせて注意をさせるなど。
勉強時間に集中して勉強させるため、その間は父親も全力で教えた(子ども以外と会話をせず、訪問客が来ても待たせておいた)
頭が良く働かなくなるので、食べ物を食べ過ぎないようにさせた。
結果が良くてものろのろやった場合は評価しなかった。
子どもをよくしつけるには、親は物事の善悪に関して首尾一貫していないといけないと考え、ダメなことは常にダメで例外はないとした。
子どもを叱る時は、本人が叱られている理由がよく分かるように説明した。
子どもは他の子どもと遊ばせると悪いことを覚えるし危険なので、親が子どものような心で一緒に遊んだほうが良いと考えた。
他の子と遊ばせる時は親の監督下で遊ばせた。
子どもがよく勉強した日はお金を与えた。そのお金を賢く使う方法も教えた。お菓子を買うとすぐなくなるが、本や道具は長く役に立つ、寄付すれば喜ばれるなど
子どもの「行為録」を作り、良いことをすれば書きつけて長く保存するようにした。良い行いをした際に、お金や物を与えることはしなかった。
子どもが難しい本の勉強を終えたら、「〇〇(その本の著者の名前)万歳」と親子で叫び、友人を招きパーティーをした。そのパーティーでその本について語らせた。
子どもを褒め過ぎると効果がなくなるため、あまり褒めなかった。子どもがうぬぼれてダメにならないように、他人にも褒めさせないようにした。
健康を大事に考え、毎日外で運動した。
ご注意いただきたいことなど
・この本は読みやすい本ではありません。言葉遣いも硬いし、文章が冗長(やたらと長々詳細に書かれている)な部分もあります。
・この本にはビッテ以外の天才の例もたくさん出て来ます。
ビッテほど詳細は書かれていませんが、いろんなタイプの天才のエピソードは参考になると思います。
個人的にはストーナー夫人と言う大学教授の子育て例が興味深かったです。
例えば、「部屋のどこかに物を隠して、子どもがそれに近づけば低い音、遠ざかれば高い音を出す遊びで耳を鍛える」「タイプライターでつづりを教える」など
・この本はもとになっているのが1800年台の教育理論で、大正時代に出版されたものなので、現代人としては違和感を覚える話もあります。
例えば、「物をこぼした場合、パンと塩しか食べてはダメ」のようにしつけが厳しすぎたり、「子どもの病気の原因はたいてい食べ過ぎ」などという超理論も展開されています。
その辺は適当にスルーを推奨します。
・この本は「子どもの教育はいかに早く始めても早すぎることはない」「どんな子どもも早期教育を受けると才能が伸ばせる」というスタンスです。
しかし、私個人としてはそう言い切るのは危険だと思います。早期教育に合っていないタイプの子どもに無理をさせて、心身に悪影響を及ぼす可能性を考慮されていないのが気になります。
子どもの様子を丁寧に観察しながら進めたらそんなことにはならないのかもしれませんが、ビッテ式の失敗例もあるなら知りたいなと思います。
コメント
『早教育と天才』は息子が0歳の時に読んだのですが、非常に興味深く、いくつか育児に取り入れたものもありました。ただ、散歩の時に様々な話をするというのはとても効果的だと思うのですが、親の側にも相当の教養が要求されると思うので、なかなかハードルが高いです。
こちらの本であまり賛同できなかったのは、同年代の子と遊ぶこともさせなかったという点でした。ビッテは確か成長して学者になったと記憶してますが、昔の学者なら個人の才覚でやれてたのかもしれませんが、現代は共同研究など他人とうまくやる力は学者でも必要です。
失敗例、というのかわかりませんが、ビッテ自身、歴史的に名前をとどろかせるほどの大人物になったのか?というと、私は特に彼のことを知らないので、どうなんだろな、という気持ちはあります。
>辰子様
コメントありがとうございます。確かに、この本で紹介されていた事例はどれも親に知識と時間と財力がないと、かなりハードルが高いですよね。
あと、ビッテは多分一人っ子だと思いますが、兄弟がいたならここまで徹底した教育は難しかったかなと思います。
子ども同士の交流を制限するビッテのやり方だと、同世代とのコミュニケーション能力は育たないですよね。現代ではむしろ、「いろんな子がいると知るため、公立小学校に行かせる」「子どものコミュニケーション能力を高めるため、チームスポーツなどをやらせる」のが良いと考える人が多いと思います。
ビッテがそれほど有名になっていないというのも同意です。教育で作り出した天才の限界なのか、彼が選んだ分野が「法学」なので科学者のように世間に知られる発見がなかったせいなのか、気になりますね。
eisaiさん、こんばんは。
ビッテ式は初めて聞きました。色々と勉強されてるんですね。
いくつか自身の育児に取り入れたいものがありましたね。
特に、いろんな場所に連れて行って、その感想を他人に説明させる、っていうのは良いなと思いました。
興味深く、楽しいと感じた事を人に上手に伝えて、相手と喜びを共有できるような子供になって欲しいと思いました。
要は、高いプレゼンスキルを身に付けて欲しいですね。
>テンマ様
ビッテ式、教育熱心な方でも知らない方は多いと思います。
私も家庭保育園の教材の宣伝で見なければ知りませんでした。
しかしこの本(早教育と天才)は早期教育業界ではけっこう知られているらしく、七田式の七田眞さんや、ソニー創業者の井深大さんなどもこの本を読んで勉強されたそうです。
「感想を人に説明させる」っていうのはうちも取り入れたいなと思っています。
その話を熱心に聞いてもらえたら、自己肯定感も高まる気がしますね。